『努める』と『務める』の違い
「努める」と「務める」は、どちらも「つとめる」と読み、一見すると同じ意味のように思われます。
しかし、この二つの言葉は微妙なニュアンスの違いがあり、使い分けることでより正確な表現が可能になります。
今回はこの二つの言葉の違いを、例文を交えながら詳しく解説していきます。
「努める」 努力を伴う、目標達成への意欲
「努める」は、ある目標に向かって積極的に努力すること、つまり「努力する」「励む」という意味を持つ言葉です。
- 主体的な行動
自ら進んで行動し、目標達成のために努力する様子を表します。 - 継続性
一時的な努力ではなく、継続的な努力を伴うことを示唆します。 - 改善・発展
より良い状態を目指して、常に努力を続けることを意味します。 - 主語は人
主に人が何かを行う際に用います。 - 動作に焦点
努力や行為そのものに焦点を当てています。
「努める」の例文
- 仕事の効率化を図るために、新しいシステムの導入に努める。
- 新しい言語を習得するために、毎日1時間勉強に努めている。
- 顧客満足度向上のため、サービスの改善に努めている。
- 社長は、社員のモチベーション向上に努めている。
「務める」 役割や責任を果たす、使命感
「務める」は、与えられた役割や責任を果たすこと、つまり「勤める」「役目を果たす」という意味を持つ言葉です。
- 形式的な場面
組織や社会における役割を明確にする際に使用されます。 - 主語は人または物
人だけでなく、物事にも用いることができます。 - 役割や責任に焦点
ある役割や責任を果たすことに焦点を当てています。 - 義務や責務
義務や責務として行うことを意味する場合もあります。
「務める」の例文
- 親として子供を育てるという務めを果たす。
- 班長として会議の進行役を務める。
- 私はこのプロジェクトのリーダーを務めることになった。
- 国民の一人として、社会貢献に務めるべきだ。
「努める」と「務める」の使い分け
- 目標に向かって努力する場合: 「努める」
例:新しい言語を習得するために、毎日単語を覚えることを努めている。 - 与えられた役割を果たす場合: 「務める」
例: 彼は、プロジェクトリーダーとして、チームをまとめることを務めている。 - 組織の一員としての責任を果たす場合: 「務める」
例: 社員は、会社の発展のために、それぞれの役割を全うすることを務めている。 - 個人的な目標と組織の目標が一致する場合: どちらの言葉も使える
例: 彼は、会社の利益向上に努める(務める)と同時に、自分のキャリアアップも目指している。
ビジネスシーンでの使い分け
ビジネスシーンでは、どちらの言葉も頻繁に使用されます。
- 「努める」
新規事業の立ち上げや目標達成など、積極的に行動し、結果を出すことを期待される場面で用いられます。
例えば、プレゼンテーションの場で「お客様のニーズに応えるべく、より良い製品の開発に努めてまいります」のように使われます。 - 「務める」
役職や役割が与えられた際に、その責任を果たすことを表明する場面で用いられます。
例えば、会議の冒頭で「議長を務めさせていただきます」のように使われます。
『努める』と『務める』の共通点
このように「務める」と「勤める」という言葉は、日常会話で頻繁に用いられるにも関わらず、その意味合いは微妙に異なり、混同されることも少なくありません。
しかし同時にいくつかの共通点もあります。
- 目標指向性
いずれも、ある目標に向かって行動することを意味します。 - 主体性
外的な要求だけでなく、自らの意思で行動することを意味します。 - 継続性
一度だけではなく、継続的に努力や行動することを意味します。
特に、目標に向かって努力を続けるという点において、両者は共通しています。
例えば、「仕事に努める」という場合、単に今日一日の仕事をこなすだけでなく、長期的なキャリア目標に向かって、日々努力を積み重ねることが求められます。
『努める』と『務める』の違い・共通点まとめ
「努める」と「務める」は、どちらも「努力する」という共通の要素を持ちながらも、それぞれが異なるニュアンスを持つ言葉です。
「努める」は、主体的に努力し、目標達成を目指す際に用いられ、「務める」は、与えられた役割や責任を果たす際に用いられます。
どちらの言葉を使うかは、状況や文脈によって異なります。
言葉の意味を正しく理解し、使い分けることで、より正確で洗練された表現が可能になります。
毎日長時間の勉強に努めながら、生徒会長として生徒をまとめることを務めている
コメント